人と動物の関係学 CAIRC奨学金プログラム これまでの論文趣旨
これまでの論文趣旨
適性試験に合格している使役犬なら 
安心して、AAA/AATに参加できる
研究テーマ「AAA/AATは犬にストレスを与えるだろうか?」
内田佳子・保本聡子

この研究は当初、「動物介在療法に用いる犬の選択について」という研究テーマでスタートしたものですが、今回の発表に当たり、1年間の成果をまとめ、テーマを絞りました。内田さんは獣医学博士で、酪農学園大学獣医学部助教授。北海道ボランティアドッグの会に所属し、高齢者施設、保育園、精神障害者施設などで動物介在活動などを行っています。研究内容は、AAA(動物介在活動)/AAT(動物介在療法)の使役犬がそれらの活動を行うことでストレスを感じているかどうか調査研究したもの。これまで、AAA/AATの使役犬について、その適性を調べることはあっても、その犬たちがストレスを受けているかどうか調べたものはありません。AAA/AATが今後、いっそう普及するためにも、動物愛護の視点からも重要な研究といえるでしょう。

この調査では、行動観察だけではなく、急性ストレスの指標として唾液中コルチゾルの測定を行い、ストレスを科学的に、客観的に調査しています。これまで動物側のストレス度について調査が行われていない理由の一つとして、客観的な判定が難しいということがありました。しかし、唾液中コルチゾルなら採取も簡単で、使役犬にストレスもかけません。そんな状況から、活動前後のコルチゾル値の測定結果と行動観察の両面から調査研究が行われたわけです。

「動物が不安を示す行動として、パンティング(喘ぎ呼吸)、不適切な場所での排尿や排便、集中力の低下、脱出しようと試みたり、出入り口に近寄ろうという行動、異常にほえる、鳴く、鼻を鳴らす、異常な興奮、頻回のあくび、舌なめずり、過度の身繕いなどがあります。今回調査した結果、動物介在活動で、これらの行動をとる供試犬はいませんでした。動物介在療法では毎回30分を過ぎた頃から供試犬の集中力低下が観察されましたが、他の不安行動はまったくなかったことから供試犬の性格によるものと考えられます。

また、コルチゾルの測定値についても活動前の値は平常時の値に合致していて、年齢、活動経験、適性試験の成績とは関係が見られませんでした。活動のための車での移動もストレスにはなっていないことが示されました。活動後の測定値もそのほとんどが平常時の値でしたが、動物介在活動で2例が非常に強いストレスを受けているという結果が出ました。その原因は、活動した施設に発情した雌犬がいたことではないかと思われ、今後、この2頭についても、他の使役犬についても追跡調査する予定です。

今回の研究に使った犬はすべて使役犬としての適性試験に合格しています。そのため、犬全般に言えることではありませんが、AAAも、AATも、使役犬のストレスの原因にはなっておらず、動物福祉を考えても安心して活動に同行できることが示されたと思います」
※Letter from CAIRC 1999年7月号より
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