人と動物の関係学 CAIRC奨学金プログラム これまでの論文趣旨
これまでの論文趣旨
教育に犬を介在させた一番の効果は、
「学校に行くのが楽しくなること」
研究テーマ:「小学校における犬を用いた『動物介在教育』
(Animal Assisted Education)の試み」
学校法人立教女学院 小学校宗教主任
吉田 太郎(よしだたろう)
吉田 太郎

吉田太郎さんが犬を用いた動物介在教育(Animal Assisted Education、以下AAE)を自身が勤める立教女学院小学校に導入したのは2003年度のこと。AAEプログラムの導入にあたっては、教職員や保護者の理解を得るための事前説明を行うとともに、専門家の助言や指導をもとにAAEに適した犬種を選定した上で繁殖元を選び、さらに子犬の社会化トレーニングや獣医師と協力した上で衛生管理を行うなど、綿密な計画のもとに進めていきました。さらに、子どもたちに対しては犬と人間との関係や犬の性質を教える授業を行い、保健室やスクールカウンセラーとの連携も進めるなどして、2年越しの準備の末にプログラムをスタートさせたのです。

子どもたちと一緒に過ごす仲間として選ばれた犬種は、警察犬や災害救助犬としても活躍するエアデール・テリア。名前はバディ(メス)。バディは毎朝、吉田さんと共に自宅から学校へ出勤。吉田さんの授業があるときは一緒に教室へ行き、3分間の子どもたちとのふれあいタイムを過ごしたら、残りの授業時間は教室の片隅で寝そべって授業を受けています。吉田さんによると、「子どもたちは、“犬は騒々しいのが嫌い”だと専門家から聞いているため、バディの眠りを邪魔しないようおしゃべりをやめるため、授業中の集中力はかえって高まっています」とのこと。

授業がないときは教員室の一角に作られたバディ専用の部屋で過ごし、休み時間には自由に子どもたちが部屋に遊びに来てリラックスしていくことも。そのほか、運動会の行進、避難訓練、遠足、卒業式の記念撮影など学校行事にも参加し、子どもたちの行事への参加意欲を高めています。また子どもたちが学校教育の一環として地域の老人福祉施設へ訪問ボランティアをする際にもバディは一緒に同行し、子どもとお年寄りとの円滑な交流の手助けをしています。

さまざまな効果が得られた中でも、一番の効果は「子どもたちが学校に行くのが楽しいと思ってもらえていること」と吉田さんは話しています。また、「バディは、コミュニケーションを円滑に進め、よりよい人間関係を構築するための仲介者となっている」とも語っています。

AAEプログラムを他校で行う場合、単に犬を学校に置けばいいというものではなく、犬の飼育者(リーダー)を一人決め、安全にかつ効果的に犬をコミュニケーションの仲介者として介在させることが最も重要だと吉田さんは指摘します。また、動物アレルギーの児童への対応や咬傷事故を防ぐための対策、犬の飼育費用についても事前に関係者の理解を得たうえで計画する必要があります。吉田さんはAAEの前例が見つからず試行錯誤の連続だったといいますが、今後は本件が良いモデルケースとなることでしょう。
※Letter from CAIRC 2006年2月号より
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