研究テーマ:「コンパニオンアニマルの飼育が職業性ストレスと
うつ傾向に与える影響」 |
東京医科歯科大学大学院 保健衛生学研究科 健康教育学 博士課程 鈴木 恭子(すずききょうこ) |
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近年の日本経済の低迷は、企業で働く人々の心身に少なからず影響を与えています。例えば、20歳代から50歳代における死因は、どの年代でも自殺が1位または2位。さらに、うつ病や神経症など精神疾患による患者数も毎年増加傾向にあり、20歳代、30歳代では他の疾患の受診率より精神疾患による受診率がきわめて高くなっています。自殺を防止する上でも、労働者への精神的なケアが重要な課題となっているといえるでしょう。
産業保健をテーマにさまざまな調査研究を行っている鈴木さんは、企業で働く人の中に「帰宅すると真っ先に飼い犬に話しかけ、ストレスを解消している人」が複数存在することを知り、コンパニオンアニマル飼育が労働者のストレスコーピング(ストレス対処法)として良い影響を与えているのではないかと着目しました。
実際、高齢者においてはコンパニオンアニマル飼育による健康維持、社会活動の維持または向上傾向が示唆されているほか、コンパニオンアニマルの飼育者はストレスに対する良好な適応能力がみられるという報告もあります。さらに、アルツハイマー型痴呆症の家族を介護する男性と40歳未満の女性は、コンパニオンアニマルを飼育している場合に、飼育していない場合より、うつ傾向が低い状態にあるという報告もあります。
そこで鈴木さんは、「コンパニオンアニマル飼育による効果が労働者にも当てはまり、職業性ストレスおよびうつ傾向を改善できるのではないか」と仮定し、ある精密機器メーカー社員約1,300人を対象にコンパニオンアニマル(犬・猫)飼育状況と職業性ストレスおよびうつ傾向の関連調査を実施しました。
調査は、(1)基本属性(年齢・性別・職種)、(2)生活習慣要因、(3)現在の健康観、(4)うつ病のスクリーニングテスト、(5)職業性ストレス尺度、(6)コンパニオンアニマルの飼育状況、の6項目について分析されました。この結果、コンパニオンアニマル飼育者と非飼育者との間で有意な差が出たのは、定期的なスポーツをしている人が飼育者に多かったという点。犬・猫の種類には関係なく、コンパニオンアニマル飼育には散歩を含めた運動を促す効果があることが示唆されました。定期的な運動は生活習慣病の予防に役立ちリフレッシュ効果もあるとされていることから、コンパニオンアニマルの飼育が間接的にうつ病の予防につながる可能性も示唆されると鈴木さんは考えています。
また、コンパニオンアニマル飼育とうつ傾向に関しては、飼育者・非飼育者の間に有意な差は認められませんでした。鈴木さんは「労働者におけるストレスコーピングとして、上司や同僚などによるソーシャルサポートが有効であるとされていますが、それ以外のストレスコーピングの有効性は明らかになっていません。そこでぜひともコンパニオンアニマルという第2のストレスコーピングを示したかったのですが、関連性が検証できず残念です」と語っています。また、「これまでの先行研究で製造職にうつ傾向が多いことが示唆されています。本調査の基本属性では製造職の比重が全体の4割と他の職種に比べて高かったこともあり、本来はうつ傾向である人が改善されているという可能性も否定できません」とも説明しています。
鈴木さんは再度、コンパニオンアニマルと職業性ストレスとの関連を調べるためには、うつ傾向の高い労働者を対象にコンパニオンアニマル飼育を勧め、飼育前後の効果測定ができないかとも考えています。
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