人と動物の関係学 CAIRC奨学金プログラム これまでの論文趣旨
これまでの論文趣旨
ポニーが公共のコンパニオンアニマル的な役割を果たす可能性を示唆
研究テーマ:「都市空間におけるポニーとのふれあいが地域にもたらす影響について
〜ポニー(動物)のいる公園の意義と役割を考える〜」
社団法人 東京乗馬倶楽部 ポニー事業部マネージャー、インストラクター
深野 聡(ふかのさとし)
深野 聡

『渋谷区立代々木ポニー公園』は都会の中で大型動物であるポニーと気軽にふれあうことのできる空間として、平成15年に整備されました。区の委託を受けてこの公園の管理・運営を行っているのが、深野さんの所属する東京乗馬倶楽部です。深野さんは、都市空間におけるポニーとのふれあい活動がどのような価値を持つのかを探り、より地域と密着したポニー施設づくりを行うことを目的に、[(1)利用者へのアンケート調査] [(2)来園した子どもの描画の調査] [(3)団体利用機関への意識調査] [(4)他のポニー施設へのアンケート調査]を行いました。

[(1)利用者へのアンケート調査]でわかった利用者像は、その約75%が渋谷区および近隣区の住民であること。代々木ポニー公園を訪れることは、観光やレクリエーションという特別な外出というよりも日常生活の一部であり、それだけにリピート率も高く、ここではポニーとのふれあいが日常的な光景になっていました。来園世帯のペット飼育率が犬の全国飼育率を下回っていることから、都市部の住宅事情等で動物を飼えない家庭にとって、ポニーが公共のコンパニオンアニマル的な役割を担っている可能性が推測されています。

[(2)来園した子どもの描画の調査]は2回行われていますが、初回調査とリピーターの増えた半年後の調査では描かれる絵に明らかな違いが見られました。初回調査では自分と馬を描いた子どものうち「乗る」場面を描いたものが多かったのが、半年後の調査では逆転し、「ニンジンやり」や「ブラッシング」などの世話をする場面が多くなり、またポニー個体の毛色や柄の特徴を表現しているものも増えたのです。深野さんは、自分のお気に入りのポニーに毎日ニンジンをあげる子どもの姿が見られることなども例に挙げ、「ふれあいが増すにつれポニーが擬似コンパニオンアニマル的な役割を果たしている」との報告をしました。

ポニーが公共のコンパニオンアニマルになり得る可能性がある一方で、[(4)他のポニー施設へのアンケート調査]からは、ポニーの問題行動が比較的高い発生率で起きていることも示されました。問題行動の背景には、「大声で騒ぐ」、「ポニーの後ろに回る」など馬にストレスを与えるような来園者の行為があることもわかり、ポニーの習性を事前に学ぶ場の必要性も浮かび上がりました。

ポニーという大柄な動物の場合、グループ活動で餌あげや小屋掃除などの飼育作業を応用することも可能であり、深野さんは情操教育上、多様なふれあいの形を創り出せることにも注目すべきだと考えています。園外保育・校外学習などで代々木ポニー公園を訪れたことのある17の機関を対象とした[(3)団体利用機関への意識調査]では、15の機関がポニーとのふれあい活動を有益だとし、今後は「障害児への対応」を求める声が多く聞かれました。現状では各施設が個別に障害者への対応を行っているに留まっていますが、今後は施設間協力によるスキル向上や、医療・教育・心理の専門家とのネットワークづくりにも取り組む必要があるとしています。

報告を終えた深野さんは、「ポニー公園へのはじめての来園目的は乗馬でも、リピーターとして訪れると活動が餌あげやブラッシングなどへと変化することは、感覚としてはつかんでいました。そのような傾向を実際に利用者の声や子どもたちの絵からデータとして客観的に示せたことは大きな成果です。既存のポニー施設は『乗ること』をメインに考えがちでしたが、それ以外のメニューをいかに用意できるかが課題だということがはっきりしました」と今後の展開への抱負を語りました。
※Letter from CAIRC 2006年2月号より
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