犬の効率よいしつけを行うための
トレーニング方法確立へ向けた研究 |
| 研究テーマ:神経科学的アプローチによる犬のトレーニング法の確立 |
| 高等応用動物研究所 研究員 大谷 伸代(おおたにのぶよ) |
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日本では現在約1114万頭(2003年度ペットフード工業会調べ)の犬が家庭で飼育されていますが、飼育数が年々増加し、人と犬との関係が密になるにつれて、さまざまな問題が浮かび上がっています。なかでも過剰咆哮や攻撃行動など「問題行動」の増加が挙げられ、これが飼育放棄の結果を生み出す場合も多くなっています。また、欧米と比較すると「しつけ」に対する社会認識も日本はまだまだ低いのが現状です。こうした状況を踏まえ、犬の効率的なしつけ方法を確立するための研究を行ったのが大谷さんのグループです。
「生き物の刺激伝達経路は、外界からの刺激情報を受け取った上位中枢から視床下部に指令が伝わり、自律神経系つまり交感・副交感神経を介して生体反応が引き出されます。そこで、正常な生体反応が行われているかどうかを、交感神経活性評価の指標となる尿中カテコールアミン濃度を測定することで明らかにしようと考えました。
実験は、大きく分けて3つ行っています。まず対象とした実験では、しつけに必要な座れ・待て・伏せなどの基本トレーニングの前後に尿を採取し、尿中カテコールアミン濃度のうち、ノルアドレナリン(NA)とアドレナリン(A)濃度の数値を測定しました。結果はトレーニングの前後いずれも、尿中NA濃度とA濃度に一定の相関が見られました。これが正常な反応です。
次に、攻撃行動を起こす個体、過剰咆哮を示す個体とコントロール群それぞれについて、安静時と、時速25キロ前後で20〜30分走る運動負荷後のNA・A濃度を測定しました。するとコントロール群ではやはり安静時も運動負荷後も、一定の相関が見られたのに対し、問題行動を起こす犬の場合は安静時であってもNA濃度が異常に高いなど相関関係が見られず、運動負荷後に対照群で見られた適度な刺激応答性とは明らかに異なっていました」。大谷さんは、問題行動を呈する犬は、刺激に対する交感神経系の一連の応答に何らかの不具合が生じている可能性があると指摘します。
「さらに、以前は問題行動があったものの服従トレーニングを通じてある程度、行動の改善が見られる犬についても調べてみました。すると、安静時には低かった尿中NA・A濃度の相関が、トレーニング後には正常犬に近い値が得られました。このことから、交感神経系の応答不具合による問題行動に関しては、その不具合をもとにもどしてやれば改善の可能性があるのではないかと考えられ、現在さらなる検討を行っているところです」。
効率のよいトレーニング方法や問題行動の早期改善により、まずは家庭犬のしつけレベルを底上げすることが重要だと大谷さんは考えています。また、介助犬などのアシスタントドッグは高度なトレーニングにも適応できる能力を求められますが、基本トレーニングに対する交感神経系の応答を見ることにより、より早い段階でアシスタントドッグとしての適性を見極める選別がある程度推測可能になるとしています。
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