人と動物の関係学 CAIRC奨学金プログラム これまでの論文趣旨
これまでの論文趣旨
犬と人間の顔認知比較から、
“親愛の情”を司る脳活動の一端を探る
研究テーマ:「人間とコンパニオンアニマルの関係」に伴う
認知情動機構の脳内表現:磁気共鳴機能画像を用いた研究
京都大学大学院医学研究科附属高次脳機能総合研究センター助手
花川 隆(はなかわたかし)
花川 隆

人はなぜ、コンパニオンアニマルに愛情を注げるのでしょうか。親愛の情を感じるメカニズムとはどのようなものなのでしょう? その問いに対する答えは未だ解明されていません。京都大学大学院で脳機能の研究に携わっている花川さんは、愛情が生まれる一つの要因として、相手の顔を見たときに脳で行われる「顔認知」の神経機構に着目しました。

「最近、磁気共鳴機能画像(functional magnetic resonance imaging : fMRI)などによる脳研究の進歩により、複雑な心の働きにも対応する脳活動が実存することがわかってきました。たとえば、人間の顔認知には後部側頭葉下面に存在する紡錘状回の一部の活動が関わっていることが、多くの研究によって明らかにされています。そこで本研究では、まず一点目として、飼い主が犬の顔認知をする神経システムは人の顔認知を行うそれと共通しているのか、次に、親しみのある顔、単に知っている顔、まったく知らない顔の差は顔認知の脳活動にどのような影響を与えるのか、の2点についてfMRIを用いて明らかにすることを目的としました」(花川さん)。

実験は、脳の画像を高解像度で撮影できるMRI装置の中で、被験者11名に8種類の写真を提示して既知・未知を答えてもらい、その際の局所神経活動に伴って生じる酸素代謝や脳血流の変化を計測するもの。写真は、(1)被験者の家族 (2)あらかじめ覚えてもらった人 (3)知らない人 (4)被験者の飼い犬 (5)あらかじめ覚えてもらった犬 (6)知らない犬 (7)あらかじめ覚えてもらったモザイク画像 (8)知らないモザイク画像が用いられました。

花川さんは結果について、現時点では被験者の数が十分とは言えないため、あくまで予備的なものに過ぎないと断った上で、こう話します。
「人の顔認知の場合も犬の顔認知の場合も、紡錘状回の一部(ブロードマン37野)で脳の活動が認められました。部位としては犬と人に明らかな差はなく、共通の神経基盤が使用されているものと考えられます。また、親しい人の顔写真、飼い犬の顔写真を見たときは共に前頭前野眼窩面・扁桃体で反応が認められました。この部分の活動が、親愛の情と関連する可能性について今後も検討を続けたいと思います」。
親愛の情を司る神経機構を今後さらに解明していくためには、実験データ数を増やすとともに、自律神経反応の研究や主観的な気持ちに関する調査も並行して行い、総合的に検討していくことが重要だと花川さんは考えています。
※Letter from CAIRC 2004年7月号より
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