人と動物の関係学 CAIRC奨学金プログラム これまでの論文趣旨
これまでの論文趣旨
ネコの毛色形成を遺伝子レベルで追い詰め、
ネコと人間の共生関係の長い歴史を解き明かす端緒を開く
研究テーマ「ネコの毛色パターン形成機構〜伴侶動物の個性発現を知る」
東北大学大学院生命科学研究科生命機能科学専攻博士課程前期課程終了
久保悠子

発表者は共同研究者 東北大学大学院生命科学研究科・助教授 山本博章

久保さんと山本さん、そして、現在も同大学の博士課程で学ぶ福崎麗さんのチームは長年にわたってマウス(ハツカネズミ)の毛色発現に関わる遺伝子についての研究を続けてきました。ネコの毛色の研究は、その延長として取り組んだ試みです。
「わたしたちの研究の目標は、色素細胞の発生機構がどのようになっているのか、そして、それがどう進化してきたのか、という点にあります。色素細胞の機能は、紫外線防御がよく知られていますが、それだけではありません。婚姻色やカムフラージュ、視覚・聴覚とのかかわり、さらにメラニン色素が多くの薬剤を吸着することや、ラジカルスカベンジャーとしての機能を持つことも知られています。また、これらにかかわる遺伝子の産物は、エネルギー代謝や免疫機能にも影響を及ぼしています。これだけ重要な機能を持つ色素細胞のシステムが、生態学的なストレスなどでどう変わっていくのか、といった点にも注目しています。突然変異などで色素細胞に大きな変化があれば、すぐに体毛に現れて一目で見分けられるのはこの研究にとって大変有利な点です。また、このような変異が起きてもその個体は死に至ることがほとんどありません」

生きたまま長く研究できれば、加齢にともなうデータも得られます。したがって、マウスなど小型で扱いやすい動物の毛色と色素細胞については、古くから世界中で研究が進んでいます。
「これまでの研究から、哺乳動物の場合、色素細胞を作り出す細胞は2種類しかないことが分かっています。その一つが神経冠細胞という脊椎動物に特有の細胞です。これは体の背側から全身に広がっていく細胞で、そこから分化する色素細胞が頭髪や体毛、皮膚の色などを決定します。これまでにこの過程に関わる遺伝子が100以上みつかり、数10個が塩基配列まで解明されました。このうち明らかに黄色に関する遺伝子は2つあります。哺乳動物の毛色形成の基本的な機構は保存されて共通する部分があるはずですので、この遺伝子をネコで確認してみようと試みたのが今回の研究です。毛色は哺乳動物の重要な個性の一つであり、長い間伴侶動物として人間と共生してきたネコと人間のかかわりを研究する端緒になればと考えました。今回のネコの色素細胞研究では、この黄色に関する2つの遺伝子の1つについて解明しました」
※Letter from CAIRC 2003年7月号より
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