カナダの刑事施設での動物介在プログラムを調査
犬や猫との触れ合いで被収容者たちの心を育む |
研究テーマ「プリズン・ペット・プログラムの意義と効果
−カナダにおける取り組みを中心に」 |
| 関西学院大学大学院法学研究科 平山真理 |
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海外では、動物を介在させた活動がさまざまなシーンで利用されています。刑事施設の被収容者にペットを飼わせたり、世話をさせたりする「プリズン・ペット・プログラム」もそんな活動の一環で、
アメリカ、カナダなどで導入されています。このプログラムを関西学院大学大学院で法律を学ぶ平山真理さんが調査しました。刑法と少年法を学ぶ平山さんは、近年、少年犯罪の増加、それも残虐な犯罪の増加について考え、
被収容者が他者の命に共感したり、それを尊重する気持ちが希薄なことに注目し、このプログラムを実施しているカナダの刑事施設で聞き取り調査を行い、その結果を報告しました。
平山さんは、4ヵ所の刑事施設を訪れ、プログラムの実施状況を調査し、プログラムを実施するスタッフサイドとプログラムを受ける被収容者の一部にインタビューしています。
「バンクーバーにある女性刑務所ではこのプログラムがビジネスとして成り立っていました。一般の人々の飼っている犬を預かり、その間、ちゃんと世話を行ったり、行儀の悪い犬を被収容者が訓練してソーシャルスキルを学ばせることもあります。
また、犬の美容室も併設されていて、被収容者はペットホテルスタッフ、ペットホテル管理、グルーマーのアシスタント、グルーマー、ペットトレーナーなど5つの免許を取得することができます。とくに、
最後の2つの免許を取得できれば、出所後、就職できる可能性も大きくなっています。それも、被収容者によるきめ細かいケアは一般市民に好評で、広告や宣伝を行わなくても予約はつねにいっぱいだということです」
平山さんが行った被収容者へのインタビューによると、プログラム参加者は、参加前と後でその心の変化がはっきり分かるということです。ドメスティックバイオレンスが原因の犯罪で服役中の女性は
「何かを愛し、何かに愛されるという経験は最上のもの」と語ったといいます。また、他のプログラムを実施している刑事施設でのインタビューでも、自分の子供を殺害した罪で服役している女性は
世話をしている子猫に対して深い愛情を見せたといいます。そして、「何かに愛情を注ぐということは素晴らしい。このプログラムでは命を救うことができる。自分の中にこれまでとはまったく違う気持ちを感じる」
と答えています。動物を世話することで、被収容者に責任感が芽生え、プログラムの中で自分の責任を果たしたことで自信も生まれていることがわかります。同時に、動物との触れ合いが被収容者の緊張感を軽減させ、
穏やかな気持ちにさせているとも言えるでしょう。
もちろん、このようなプログラムの導入には、被収容者と動物の権利や福祉に気をつけることが大切です。今回、平山さんが訪問した刑事施設ではすべて動物愛護団体が関わり、
チェック機関としての役割を果たしていましたが、このようなチェックを行わないと、動物が受刑者の更生のために単に利用されてしまう危険もあります。また、受刑者の適性も重要で、
粗暴性や危険性のある者をはずす必要もあります。ただ、平山さんは、このように残虐性のある受刑者こそが、生命の大切さを学ぶべきであるともいい、観察者として参加の機会を与えるなど、
生命を尊重することの大切さを知らせるべき、と言います。
平山さんは今後もこれらの施設で調査を進め、このプログラムが被収容者にどのような影響を与えたかについても調査分析を行う予定です。そして、最終的にはそこで得られた結果を日本の刑事施設に提示したいと考えています。
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