人と動物の関係学 コンパニオンアニマルの効用 コンパニオンアニマルがもたらす健康上の恩恵
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コンパニオンアニマルがもたらす健康上の恩恵
1997年10月
ウォルサム・ペット栄養総合研究所
主席研究員 イアン・ロビンソン博士
はじめに

動物が人に対して持つ治療的役割を示す例はいくつかありますが、最近ではアメリカの児童心理学者、ボリス・レヴィンソン博士の研究が最も関心を集めています。レヴィンソン博士の患者の中に、他人と社会的接触を持つことのできない障害のある子供がいました。ある日、その子は偶然レヴィンソン博士の愛犬に出会い、自ら犬に話しかけます。その後も続けられた犬とのコミュニケーションが、結果的に少年のリハビリへの鍵となりました。博士は、治療過程での動物の役割について様々な研究にチャレンジしながら、治療の一環としてペットを使い続けました。
生理学的効果

これまで行われた研究の結果、コンパニオンアニマルは飼い主に良い心理的影響を及ぼす可能性があると考えられています。1980年、アメリカで心疾患を持つ人を対象に初めて行われた研究では、ペットを飼っている人は、飼っていない人に比べて退院1年後の生存率が高いという結果が出ています。ペットの飼育と心疾患の初期の症状との間に相関関係がないことは、心疾患の度合いを表わす指数によって明らかにされています。つまり、ペットは、心疾患の症状の度合いにかかわらず、飼い主の回復を促進する働きがあると考えられます。

この研究の後、多くの人がペットの持つ恩恵効果のメカニズムを調べ、“ペットとの接触が人に及ぼすストレスへの影響”についての研究が集中して行われました。これらの研究の結果、ペットの存在、及びペットとの接触は、血圧の上昇や不安症状等の生理的、心理的症状に短期間で影響をもたらすことが立証されています。

1992年には、オーストラリアのべーカー医療研究所で、6,000人近くを対象に研究が行なわれ、ペットを飼っている人は、心血管疾患の要因となるリスク・ファクターがかなり少ないことが分かりました。男性の飼い主は、飼っていない同性と比べて、収縮期血圧と 血漿コレステロールが顕著に低く、女性の場合は、40歳以上の飼い主と飼い主ではない人との間に大きな差が見られました。ペットを飼っている人と飼っていない人の生活スタイルの違いについて比較してみましたが、研究結果を明確に説明出来る要因は見つかっていません。つまり、この恩恵効果がどのようなメカニズムでもたらされるかは明確にされていません。
心理学的効果

ペットを飼っている人は、飼っていない人に比べて健康で、ストレスが低いという結果に対して、もともと健康な人しか動物を飼う事が出来ないためにこのような結果になるのだと思う人もいるでしょう。これについては1987年にイギリスのケンブリッジで研究されました。71名の成人を対象にした調査で、新たに犬や猫を飼い始めてから10ヵ月以上にわたって、飼い主の行動や健康状態の変化を観察し、ペットが人の健康に及ぼす影響を調べています。この調査では、ペットを飼っていない人26人も同時に調べ、比較を行いました。

ペットを飼い始めて6ヵ月で、飼い主が幸福感を得ていることがはっきりとわかり、研究期間の間中、その恩恵効果は持続されました。また、犬を飼った場合、犯罪の被害者になる恐怖感が減少し、自尊心を持ち、犬と散歩するために今まで以上に運動することがわかりました。飼い主からはペットを飼い始めて1ヶ月で健康上の問題が減少したと報告され、特に犬を飼った場合は、この調査期間が終わるまで、良い状態を維持し続けていました。この結果、ペットを飼うことが人の健康に良い影響を及ぼし、その効果が長期間にわたって続くことが明らかになりました。
恩恵と責任

これらの研究の結果、社会でのコンパニオンアニマルに対する態度が変わってきています。現在、殆どの国の病院や高齢者・末期患者の為のホスピスで、患者さんの飼育する動物や訪問動物が見られる様になりました。また、トレーニングをした犬を障害のある人の補助に使うことにも大変関心が高まっています。このように、コンパニオンアニマルの治療的役割が増えていますが、人がペットを飼う最大の理由はコンパニオンシップなのです。コンパニオンアニマルからの恩恵を最大限に受けるためにも、飼い主が動物にあった生活スタイルを選択し、飼い主としての責任を認識することが重要です。動物を正しく認識し、適切に管理することによって初めて動物から恩恵を受けられるのだと考えて欲しいのです。つまり、ペットを飼うということは、我々がペットから受ける恩恵と、ペットが責任ある飼い主から受ける恩恵との両方で初めて成り立つものなのです。
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