『集合住宅とペット』110番は、2001年と2002年の11月に行われた集合住宅でのペット飼育に関する電話相談室です。集合住宅にお住まいのペットの飼い主や管理組合、管理会社、不動産関係者の方々より多くのご相談が寄せられ、獣医師、弁護士、マンション管理関係者など専門家が集合住宅でのペット飼育に関するさまざまな問題についてアドバイスを行いました。ここではその代表的なものをご紹介いたします。
人とペットが共生できるコミュニティづくりを目指し第2回『集合住宅とペット』110番開催 獣医師、法律家などそれぞれの分野の専門家にペットとの共生を目指す真剣な相談が寄せられる 11月15〜16日、コンパニオンアニマル リサーチ(略称:CAIRC)は<第2回電話相談室『集合住宅とペット』110番>を開催いたしました。この催しは、集合住宅でのペット飼育に関するさまざまな相談を受け付け、その場で各分野の専門家の方々にアドバイスをいただくというもので、昨年に続き、今年も数多くのお電話が寄せられました。 これまで、CAIRCは「人間とコンパニオンアニマルとの関係学」のサポートをはじめ、ペット可集合住宅の推進など人間と動物が共生できる環境づくりのために力を注いでまいりました。皆様からいただくご相談や質問にお答えするために、97年にはテキストブック「コンパニオンアニマルとともに−集合住宅で犬や猫と暮らす」を刊行し、これまでに4万部近くを無料配布させていただいています。また、昨年はWebサイト(http://www.cairc.org)も開設し、今年は、新たに「ペットにやさしい不動産・管理会社リスト」も加えました。4月には集合住宅のペット飼育者と不動産関係者に向けた "犬や猫と暮らす集合住宅「飼い方読本」"、"犬や猫と暮らす集合住宅「経営管理サポート読本」" も刊行いたしました。今回の催しも人と動物が共生できる社会づくりの一環として取り組んだものです。正田陽一CAIRC会長はこの催しについて次のように紹介します。 私どもCAIRCは各種のテキストブックの配布やHPによる情報発信、また、ペット可集合住宅建設管理のためのシンポジウムなどさまざまな取り組みを行ってきました。これらの活動を通して人とペットが共生できる社会づくりをサポートしてまいりましたが、ペットオーナーの方々が抱える問題の多くは個別相談が不可欠なものもあるという実感を持っておりました。この電話相談室はそのような問題を抱える方々に今後の対応策を示唆できるアドバイスを行いたい、という意向から設けられたもので、今年は遠方の方にもかけていただけるようフリーダイヤルで対応させていただきました。昨年に比べると相談件数は減っていますが、テキスト配布、HP制作、シンポジウム開催で情報提供させていただいた結果と考えています。昨年以上に内容もより具体的で、『管理規約を小型犬のみOKから大型犬までOKに変えるには?』といったように、実際に規約改正のために動いたうえでの質問が増えました」 「ペット飼育の問題では『集合住宅における動物飼育を考える協議会』にも数多くのご相談が寄せられています。これまでも個別対応でさまざまなアドバイスを行ってきましたが、このような機会を共催することで、より多くの方々のご質問に応えられ、嬉しく思いました。130件ものご相談が寄せられたことは、この問題が今、いかに注目されているか、いかに重要であるか物語っていると思われます。一つひとつの団体がそれぞれこの問題に取り組むだけではなく、今後もできるだけこのような機会をもち、協力し合って集合住宅とペットの問題に向き合って行きたいと思います」 今回は、集合住宅における動物飼育を考える協議会、社団法人日本獣医師会にご後援をいただき、主催はコンパニオンアニマルリサーチが行っています。アドバイザーはペット政策研究所代表で、法律家の吉田眞澄先生、弁護士小林博孝先生、相川動物医療センター獣医師高倉はるか先生、東京大学大学院生命科学研究科加隈良枝先生、集合住宅管理組合センター代表理事島幸俊氏、常務理事 兼 事務局長有馬百江氏、集合住宅における動物飼育を考える協議会事務局長小暮富夫氏、(社)日本動物保護管理協会府馬一貴氏など専門家の方々です。 快適なコミュニティづくりを目指し管理規約改正やよりよいしつけに対する質問が目立つ CAIRCでは相談内容を相談者の居住地別、カテゴリー別に分類し、その傾向を調査しています。相談件数は計62件。居住地域別の被相談者の割合では首都圏が40%で、昨年より10%以上減少しています。つまり、首都圏以外の被相談者の割合が増加したわけですが、その要因として、フリーダイヤルを導入したこと、集合住宅とペットの問題への関心が全国に広がったことなどがあげられます。なかでも、大阪府の伸び方は顕著で、10ポイント増の、15%になっています。今後、大きな動きを見せる可能性があるといっていいでしょう。 なお、相談内容を項目ごとに分けてみると、【1】管理規約について(29%・昨年度25%) 【2】その他(16%・昨年度24%) 【3】しつけについて(13%・昨年度11%) 【3】飼育マナー(13%・昨年度14%) 【5】ペット飼育禁止集合住宅でペット飼育者がいて問題となっている(10%・昨年度14%) の順となっています。昨年度に比べると、増えているのが管理規約に関するご相談、しつけ、飼育マナーについてのご相談です。とくに、管理規約に対する質問は昨年より具体的で、すでに規約改正に向かって踏み出している方からのご相談が目立ちました。トイレのしつけや飼育マナーでのアドバイスを求める方が多かったのも、よりよいコミュニティづくりを目指したい、飼育マナーを向上したい、という方が増えた結果と考えられます。 集合住宅居住者にとって、トイレトレーニングは不可欠な課題 コマンドに合わせての排泄をしつけよう 今回の相談ではしつけのなかでも、トイレトレーニングについての質問が数多く寄せられました。成長してからのトイレトレーニングは決してかんたんではありませんが、訓練次第で覚えさせることは可能です。「戸建から集合住宅に転居したので、室内でトイレをできるようにしたい」、「生後8カ月の犬がトイレを覚えないがどうすればいいか」という質問には高倉先生がアドバイスしてくださいました。 「犬は朝起きてすぐ、昼寝の後、食事の後、遊んだ後などにトイレに行きたくなるようですから、その時間をねらってトイレに連れて行き、そわそわしてきたら『オシッコしようね』などサイン(コマンド)を出します。排泄したら、ほめたり、おやつを与えたりして、トイレから出してやります。サインを繰り返すことでその合図に合わせ、排泄できるようになります」 また、かなり定着してきたといっても、猫の完全室内飼育に抵抗のある人は少なくないのかもしれません。室内飼育に関する質問もありました。内容としては、飼っている猫をときどき屋外に連れ出すことについての是非を問うものでした。 「活動的な猫なので屋内だけではストレスになるから、ということでしたが、外にはむやみに出さないほうがトラブル回避のため、交通事故予防のためによいと思います。屋外に連れ出す場合は、リードをつけて散歩をしたり、きちんと飼い主がそばにいるべきです。室内のなかで高低差をつくり、遊び場などを工夫すれば、活動的な猫でも満足できる『場』をつくりだすことは可能です。ストレスをためないよう一緒によく遊ぶようにしてください、とアドバイスしました」(加隈先生) ペット不可からペット可への規約改正は 管理組合に相談し、じっくり取り組もう 管理規約の問題は集合住宅でペット飼育を行う際の避けては通れないポイントです。今年は昨年に比べて「ペット可検討中」の方々からの問い合わせが多かったのも特徴です。「現在はペット禁止になっていてペット可にしたいのですが、その場合、どうすればいいでしょうか?」という質問には島氏がアドバイスされました。 「管理規約の改定には区分所有者、および議決権の4分の3以上の賛成が必要になってきます。まず、管理組合にペット飼育を検討する専門委員会の設置を要望します。検討した結果を理事会にあげ、それが総会提案になります。本規約を改正し、一つひとつのルールは飼養細則でつくっていきます。これと同時にペットクラブを設立し、ペットの飼い主で自主管理、規制を行うようにしましょう。この場合、飼育者の気持ちを代弁する役割が必要ですから、飼育者のなかから管理組合の理事に就任するのもいいでしょう。規約改正は管理組合との信頼関係が大切ですから、他の居住者からクレームが出ないようマナーの改善に努めること、急いで改正するのではなく、居住者が納得できるよう時間をかけて規約改正を行う必要があります」 マンション購入時には管理規約を確認し ペット可かどうか見極めよう マンション購入時、販売員側が「ペット飼育可」と言ったはずなのに、実際に住んでみると規約には「ペット不可」と書いてあった、というケースも数件あります。これは「危害を加えない動物は飼育可」というような「あいまい規約」を販売員側が都合よく解釈したり、管理規約を確認しないまま「飼っている方もいらっしゃいますよ」「見つからなければかまいませんよ」などと答えたため入居希望者が「ペット飼育可」と受けとめたことから生じた問題です。 この問題には吉田先生から「売買契約を結ぶ前に管理規約が示され、重要事項の説明が行われるので、そのときにきっちりと確認し、そこでも同じ説明がされるのであれば、それを覚書にしてもらうか、それがだめな場合には説明の内容を正確にメモに取っておきましょう。後にトラブルが生じたとき、デベロッパー側に責任を取らせやすいと思います。すでに、入居してしまった場合は、ペット可にするため規約改正などを働きかけていきます」とアドバイスがありました。ペットオーナーは、デベロッパー側の言葉を鵜呑みにするのではなく、マンション購入時に自分自身で管理規約を確認するよう努めたいものです。 子供のためにペットを飼う。心の育成には効果的 ただし、生き物を飼う責任や世話を続ける自覚を忘れずに 今回、子供のためにペットを飼いたいとおっしゃる方からご相談を受けました。 「ペットは子供の心の育成に効果があると聞きました。子供が情緒不安定なので、犬を飼いたいと思います」 このご相談にはCAIRCスタッフが応対し、子どもにとってペットが果たす役割の大きさや、ペットを子ども任せにしないで大人が責任を持って飼う必要性について説明しました。また、この方にはCAIRC Webサイトの紹介、その他、子供への効用について資料を送らせていただきました。ただ、子供にせがまれて飼ったものの、世話ができなくなって困っているという相談も寄せられました。子供が動物から何かを学ぶことができるかどうかは大人の担う役割が大きく、大人がお手本を見せることによって教えていかなければなりません。最終的には大人が責任を持って世話を行い、きちんとしつけることが大切です。 賃貸アパートをペット不可からペット可へ 既存の入居者への対応がポイント 不動産管理会社の方から「賃貸アパートをペット可にしたいが、法律的にはどのように対応すればいいでしょうか?」というご相談がありました。このご相談には吉田先生がアドバイスしてくださいました。「既存の入居者はこれまで『ペット禁止』という条件で住まわれていたわけですから、変更の連絡、通知、説明を十分に行います。既入居者の了承を得たうえ、新規の契約は契約書を変更すれば大丈夫です。既入居者からは承諾書を取るか、その人がペットを飼いたいのであれば、契約書を差しかえます。既入居者との契約全般については更新時に内容変更を行います」 既存の入居者とのあいだでトラブルになる可能性もあるので、ペット飼育の規約をつくるなど、できる限りていねいな対応が必要といえるでしょう。 イベント開催などでペットクラブの存在意義をアピールし 非飼い主との交流も心がけよう 集合住宅でペットを飼うとき、ペットクラブは快適なコミュニティづくりをサポートしてくれる存在。ペットクラブをつくることで正しい飼育マナーを広めていけますし、トラブルの窓口にもなってもらえるので非飼い主の方にも安心です。ペットクラブはあるものの、その運営の方法、会員に積極的に参加してもらうにはどうすればよいか、というご相談にはCAIRCスタッフがアドバイスさせていただきました。 「ペットクラブの会員はほとんど犬の飼い主。しかし、半数あまりの犬の飼い主は会の活動に無関心で非協力的。共有部で犬の尿などのトラブルも出ているということです。このご相談には、猫の飼い主に了承を得たうえで、犬のしつけ教室などのイベントを開催し、多くの会員が参加できる活動を行うことをアドバイスしました。また、このとき非飼い主へのイベント参加などを呼びかけてみるのも交流が図れていいと思います」 ペットにはどんな設備が必要か? 大掛かりな設備よりそれぞれの対応で ペット可検討中のデペロッパーの方々からは必要な設備等での問い合わせがありました。犬や猫は前のペットの匂いが気になるものかという質問、内装、グルーミングルームは設置するべきかという質問もありました。このご相談には高倉先生が獣医師の立場からペットにとってどんな設備が有効かアドバイスしてくださいました。 「匂い対策は壁紙の交換、匂いのしみこみにくい床材使用、尿がついたとき、すぐに酵素系の洗剤で洗浄すれば大丈夫です。ペットがストレスを感じるとすれば、匂いより他の要因の可能性のほうが大きいと思います。また、床材は滑らず掃除しやすいもの、壁紙は匂いのしみつきにくいものを選びます。空気清浄機、ペットドア、ゲートなどもあると便利です。グルーミングルームに関してはとくに必要ないでしょう。個々の部屋のバスルームでも細かい網をつければOKです。多くの場合、ペット用に大掛かりな設備を準備する必要はありません。ちょっとした工夫をアドバイスしたり、ソフト面の対応をていねいに行うことが大切です」 ペットが嫌いな人もいるのがコミュニティ 飼育マナーを守り、迷惑をかけない飼い方が大原則 小鳥以外ペット飼育禁止の集合住宅に住む非飼い主の方の悩みも寄せられました。 「上階の部屋で犬を飼っています。飼い主が毎夜11時半頃帰宅し、そのたびに小型犬がはしゃぐらしくその音で迷惑しています。どうすればいいでしょうか?動物飼育は反対ではありませんが、迷惑行為は許せません」というご相談には、小暮氏がアドバイスされました。 「総会でペット禁止であることを発言し、規約を守るよう注意しましょう。飼育を制限する必要がないという意見が多ければ規約改正も検討するように投げかけてもいいでしょう。もちろん、飼育OKになったとしても近隣に迷惑をかけないことが基本なので、飼い方をペット飼養細則などでルール化する必要があります」 ペットの健康にも気を使おう。ペットのアレルギーも アレルゲンを突き止めて、それぞれの対応を アレルギーをもったペットも増えています。「アレルゲンは不明ですが、4日ごとに注射を打って、かゆみをとめています。薬を飲んでいましたし、アレルギー食にしていますが、効果はありません」というペットの健康に関するご相談には高倉先生がアドバイスを行いました。「動物病院でアレルゲン検査をしてください。食べ物のアレルギーなら処方食も効果的ですが、原因が分からないと対処法も分かりません。動物の皮膚科もあるので、機会があれば検査してみるといいと思います」 アレルギーの原因は、花粉、ハウスダスト、ダニ、食べ物などさまざま。アレルゲンを特定して、対応することが大切です。集合住宅では部屋の湿気がアレルギーの原因を増やす要因になっていることもあります。部屋を清潔にし、除湿機などを利用し、ペットが健康に過ごせる環境を整えるよう心がけましょう。 今回の催しでは、ペットオーナー、管理組合、デベロッパーの方々、非ペット飼育者の皆さんがそれぞれに集合住宅とペットの問題と取り組み、少しずつ広がりを見せていることがわかりました。今、新規集合住宅の中にはペット可物件が徐々に増えています。既存の集合住宅も「ペット可」に移行するケースが出てきました。集合住宅において、人間とペットが快適に暮らせる環境づくりは確実に進んでいると言っていいでしょう。ただ、集合住宅は立場の異なる人々がともに暮らすコミュニティ。動物を家族の一員と感じている方もいれば、動物が好きではない、という方もいるなかで、それぞれのライフスタイル、考え方を認め合いながら、上手に共生していくことが望まれます。ペットオーナーは、正しい飼育マナーを身につけ、非飼育者の方々の意に耳を傾け、誠実に対応していくことが大切です。それが集合住宅で動物を飼育する責任と言えるでしょう。 (Letter from CAIRC 2002年11月より) |
『集合住宅とペット』110番に大きな反響2日間で北海道から沖縄まで130件の相談が寄せられる それぞれの問題に適切なアドバイスを行うため獣医師、法律家、マンション管理専門家などを招いて 11月16〜17日、「集合住宅における動物飼育を考える協議会」(※1)と「コンパニオンアニマル リサーチ」(略称:CAIRC)は電話相談室『集合住宅とペット』110番を開催いたしました。この催しは、集合住宅でのペット飼育に関するさまざまな相談を電話で受けつけ、その場で各分野の専門家にアドバイスをいただくというもので、北海道から沖縄まで計130件のご相談が寄せられました。 私どもCAIRCは、これまで人間と動物が共生できる環境づくりに力を注いでまいりました。97年にはテキストブック「コンパニオンアニマルとともに−集合住宅で犬や猫と暮らす」を刊行し、その後、改訂版も発行。これまでに3万部以上を無料配布させていただいています。テキストブックは当ホームページで無料ダウンロードサービスも行っています。また、建築関係者、不動産関係者、管理会社、管理組合を対象の中心としたシンポジウム「集合住宅におけるペットとの暮らし」も東京、大阪、福岡と開催してまいりました。 電話相談室もこの取り組みの一環で、獣医師、法律家、マンション管理関係者などそれぞれの分野の専門家を招いて、ご相談にお答えいただくというものです。主催は「集合住宅における動物飼育を考える協議会」と「コンパニオンアニマル リサーチ」で、後援として、「社団法人日本獣医師会」、「社団法人東京都獣医師会」にご協力いただきました。共催団体の「集合住宅における動物飼育を考える協議会」は92年に集合住宅での動物飼育が社会に容認されることを目的に設立された協議会です。代表世話人で獣医師の清野光一先生は次のように述べられています。 「ペット飼育の問題では『集合住宅における動物飼育を考える協議会』にも数多くのご相談が寄せられています。これまでも個別対応でさまざまなアドバイスを行ってきましたが、このような機会を共催することで、より多くの方々のご質問に応えられ、嬉しく思いました。130件ものご相談が寄せられたことは、この問題が今、いかに注目されているか、いかに重要であるか物語っていると思われます。一つひとつの団体がそれぞれこの問題に取り組むだけではなく、今後もできるだけこのような機会をもち、協力し合って集合住宅とペットの問題に向き合って行きたいと思います」 なお、アドバイザーを務められたのはペット法学会副理事長で、法律家の吉田眞澄先生、井本動物病院院長で、獣医師の井本史夫先生、相川動物医療センター獣医師高倉はるか先生など計10名の専門家の方々です。 北海道、東北、九州、沖縄、と広範囲からの電話相談集合住宅とペットは大都市圏の問題から、共生を考える重要なテーマに 「集合住宅における動物飼育を考える協議会」と「コンパニオンアニマル リサーチ」は電話相談を開催後、ご相談いただいた方々からの情報や相談内容を集計いたしました。電話相談を受けつけたエリアが東京23区内の03地域だったため、相談者の居住する地域については、東京都30%、神奈川県18%、千葉県7%と相談者全体の半数以上になります。しかし、それ以外の道府県に関しては北海道から沖縄まで非常に多くのエリアから寄せられ、集合住宅とペットの問題は大都市圏に限らず、集合住宅居住者共通のテーマであることを再認識しました。また、相談時間は平均30分とかなり長く、それだけ問題が深刻であることも浮き彫りにされました。 なお、相談内容を項目ごとに分けて見ると、[1]管理規約について(ペット可検討中、ペット飼養細則、ペットクラブ設立含む)(25%)[2]その他(24%)[3]飼育マナー(14%)[4]ペット飼育禁止集合住宅でペット飼育者がいて問題になっていること(14 %)[5]ペットのしつけについて(11%)の順となっています。管理規約について考えるということは、集合住宅でペット飼育を行う際に不可欠な要素です。管理規約改正、あいまい規約の解釈をめぐる問題などクリアにすべき課題も多いといえるでしょう。内訳を見ていくと、管理規約をペット可に向けて検討中という相談者の方も多く、集合住宅でのペット飼育が着実に浸透していることもはっきりわかる結果となりました。ペット飼育禁止にしたいという非飼育者の方からの相談や販売時にペット飼育可物件と説明を受けたのに、実際にはペット飼育禁止であったという相談もいただきました。また、2番目に多かった「その他(24%)」は、相談者の抱える問題が それぞれ微妙に異なり、カテゴリーとして分けにくいものが多いという状況の現われと受け取ることができるでしょう。 あいまい規約の解釈で意見がすれ違う場合は、話し合いの場をもち、ルールについて考えよう 非常にたくさんの方々から相談いただいたカテゴリーのひとつが「管理規約について」です。管理規約の中には「危害を加える動物は飼育禁止」というようなあいまい規約をもつ集合住宅も少なくありません。しかし、あいまい規約の解釈ではこれまでにも数多くのトラブルがありました。ご相談は管理規約に「危害を加える動物は飼育禁止」という一文があることから、その解釈をめぐってもめているというものです。 「最近、転居して来た方が大型犬を飼っていて、住民間でトラブルになっているとの相談でした。ペット飼育者は性質のおとなしい犬種だし、しつけもきちんとしているので危害は加えない、とおっしゃる。ただ、大型犬ですから抱きかかえることもできず、共用部分ですれ違うときに怖い、ということです。あいまい規約のまま解釈の違いで意見をぶつけ合い、トラブルが大きくなる可能性もあります。そうなると、管理組合の活動を含め、マンションの管理全体に問題が出てきかねません。マンションの欠陥はハードだけではなく、ソフトである管理規約に問題がある場合も多いようです。実際に危害を加えたり、迷惑をかけたりしないようにすることが前提になりますが、さらに一歩進め、規約改正、飼養細則づくりを含め、居住者の皆さんでペット飼育について考えてみてください」(吉田先生) ライフスタイルの多様化にともないリゾートマンションもルールを確認したい あるリゾートマンションでは週末などに利用する世帯が多いため、ペットを連れてくることがあっても黙認状態だったといいます。しかし、ライフスタイルの多様化により居住者が増える今、そのマンションで飼育されているペットも増え、トラブルも生じてきた、という相談が寄せられました。今後、リゾート地にある集合住宅では増加していきそうな問題です。この相談には集合住宅管理組合センター事務局長の有馬百江氏にアドバイスをいただきました。 「黙認の状態がいちばんよくないので、ペット飼育可への規約改正も含めて理事会で検討してください。その場合、トラブルの原因を探ること、飼育不可の方々の意見をよく聞くこと、その理由を見つけてそれをどのように対処し、解決するのか話し合っていただきたい、とアドバイスしました。そうすれば、規約改正への方向が見つかるとお答えしました」 一人でもルールを守らない飼育者がいれば飼育禁止も。飼育者の責任を明らかにする 飼育者のマナー向上は集合住宅に限らず、ペット飼育を行う際の重要な問題です。 ペット可集合住宅の管理組合理事からのご相談は、ルールを守らないペット飼育者がいて、クレームが多くて困っている、というものでした。 「猫の糞尿、鳴き声、共用部分は抱いて移動する、などのルールが守られていない、とのことです。この場合は、飼育者を集め、話し合いをすることが重要です。一人でもルールを守らない人がいれば、飼育を全面的に禁止にせざるを得ないということも理解してもらい、飼育者の自己管理、自己規制が不可欠であることをわかってもらうよう務めてください、とアドバイスしました」(有馬氏) お互いに助け合い、励まし合うためにもペットクラブを設立しよう 管理規約の改正に向け、動き始めている集合住宅も少なくありません。規約改正のノウハウや方法論に関する質問も多数寄せられました。 「個々の飼い主が的確にしつけを行い、マナーを守ることも大切ですが、個人の力には限界があります。しかし、多くの人が知恵を出しあえば、その分、可能性も広がります。そこで、まず、ペット飼育を行っている方々でペットクラブをつくることをおすすめしています。このクラブは、あくまでも可能性を広げる目的で設立するものですから、同好会やペット自慢に花を咲かせるようなものであってはいけません。それと同時に、ペットを飼っていない人にも問題を理解してもらうため、管理組合にペット飼育を検討する専門委員会の設置を依頼するようアドバイスしています」(吉田先生) 「隠れ飼い」を続けるのではなく、ペットクラブ設立、規約改正への努力を ペット禁止の集合住宅で、いわゆる「隠れ飼い」を行っているの方々からの相談もありました。「分譲マンションに住む犬の飼育者です。現在、理事会から義務違反者に対する処置を取る用意がある、との通知がきたので心配です」という相談には集合住宅管理組合センター副代表理事の島幸俊氏からアドバイスいただきました。 「理事会として『用意がある』と通知をすることは可能ですが、一定期日に『飼育中の犬を保健所などへ送致せよ』という措置をとることはできません。飼育者同士でペットクラブを設けて、飼育マナーの向上につとめ、ペット飼育に対する居住者の賛同を得るように努力してください。一代限りの妥協案より、時間をかけて規約改正の努力をするのが正道といえるでしょう」 賃貸マンションでの「隠れ飼い」は率直に話して理解を仰ごう ペット禁止条項のある賃貸マンションで、「隠れ飼い」している方から今後の対応策についての質問もありました。 「賃貸借契約の場合、賃貸人と賃借人との信頼関係が破壊されたと評価されると契約の解除が認められることになります。しかし、ペット禁止条項があるのにペットを飼った場合、それがただちに信頼関係を破壊するとは言えず、たとえば、小鳥、金魚の類であれば、まず問題ありません。さて、猫の場合ですが、これまで裁判で争われた事例を紹介すると、多頭飼育で、周囲に多大な迷惑をかけているケースでは信頼関係破壊と評価されています。一頭飼いの場合は、必ずしも明確ではないのですが、飼い主も飼育マナーを守り、的確にしつけを行い、誰にも迷惑をかけていないのであれば、信頼関係破壊と評価されることはないと思われます。いずれにせよ、隠れ飼いはせず、ここで述べたことも含めて、賃貸人と、率直に話し合いをされることをおすすめします」(弁護士石井逸郎先生) 裁判で争うより事前に話し合うことで問題解決に取り組んで欲しい 法律面で言えば、なかなか難しい状況にあるのがペット問題。現状では裁判で争うより事前に話し合うことで問題解決に取り組んだ方がいい、というのが先生方の一貫した意見です。「管理組合などから強硬な飼育禁止令を受取ったが、裁判で争いたい」というペット飼育者からのご相談には吉田先生にお答えいただきました。 「管理規約で飼育禁止という場合でも、管理組合、ペットの飼い主双方ともに裁判はあまりおすすめできません。トラブルの芽が出てきたら、大きくなる前にきちっとした対応策を考え、さらに一歩進めてトラブルを防ぐことを考えてもらいたい、と申しました。トラブルがないように、たとえトラブルが発生しても大きくならないように、ペットクラブをつくって、飼い主同士でマナー向上を話し合ったり、反対者の意見を聞いたりして対応すべきです。また、かみつき事故に対する法的な問題を心配される方もいます。これは状況によって違うので一概には言えませんが、犬が起こした事故は犬の飼い主の責任です。事故を起こさないことがなによりも大切ですが、事故が起こってしまえば、誠実に対応し、納得してもらう以外ありません。『人にかみつくような犬ではありませんので、あなたが悪いことをしたのでしょう』などというような態度に出れば、よい解決になりません」 ペットの問題行動は適切な対応が不可欠。すぐに専門家にみせましょう ペットの飼育方法や問題行動に関する相談も多く寄せられました。吠える、かむという問題行動は大きなトラブルに発展することもあるので非常に注意が必要です。 「吠えたり、かんだりという問題行動は優位性攻撃、別離不安など原因があり、飼い主の適切な対応により改善・解消できる場合がほとんどです。困った行動がみられ る ときは是非早めに専門家に相談してください。また、このような場合、飼い主側が大きな問題ととらえなかったために、近隣が迷惑をこうむることもあります。とくに、 だれもいなくなると別離不安のため吠え続ける犬の場合、飼い主のほうは吠えていることをほとんど知らず大きなトラブルに発展するケースもあります」(東京大学大学院農学生命科学研究科獣医動物行動学研究室 加隈良枝先生) ペットの室内飼育は健康とコミュニケーションに好影響 ペットの室内飼育を心配する飼い主の方も少なくないようです。「去勢済みの猫を飼育しています。来年、ペット可の分譲マンションに引っ越す予定ですが、これまでは自由に外へ出していたので心配です」という質問には井本先生からアドバイスをいただきました。また、犬の室内飼育に関しての相談にも答えていただいています。 「引っ越し直後は一部屋だけにいるようにさせ、その後、新しい空間に少しずつ慣らしていくようにしましょう。環境さえ整っていれば、猫は狭い部屋でも十分に適応できる動物です。屋内飼育の場合、伝染病や交通事故の危険もありません。ただ、高い場所や狭い空間が好きな猫のために小さな箱を高い場所へ置いたり、家の中を工夫したりするといいでしょう。また、犬の場合も室内飼育で問題ありません。庭で犬を飼うより飼い主との交流がはかることができるため、犬にとってもより快適な住環境といえるでしょう。しかし、散歩だけは欠かさずに。散歩は他の犬とのコミュニケー ションをはかる場でもあり、犬の健康にも大切です」 動物の毛アレルギーの方との接し方は心配りが不可欠です 猫の毛アレルギーなどの理由から集合住宅でのペット飼育に反対する人もいます。 「近所に猫の毛アレルギーの方が越してきました。今のところ、もめているわけで は ありませんが、どのような注意が必要ですか」という質問が寄せられました。 「アレルギーといっても程度によって対応は違います。猫の毛、フケ、ノミの死骸 な どによってアレルギーが発生し、子どもはぜん息が出る場合もありますから、室内 飼 育を徹底していただきたいと思います。集合住宅で人に迷惑をかけないためには、 掃除をマメにする、犬や猫の布団は掃除機で吸ってから干す、空気清浄機を設置す る、 ペットを清潔に保つ、という配慮が必要です。つまり、ペットの健康管理を適切に行うことがアレルギーをもつ方に対する心遣いにつながります」(高倉先生) アレルギーを持つ方とペット飼育者が同じコミュニティで暮らすとき、相手に対する心遣いをきちんと表すことができる場合と、そうでない場合はまったく関係性が異なってきます。ペットを飼わない人にどこまで配慮ができるか、それはペット飼育 者 がいつも自分に投げかける必要のある大きな問いかもしれません。 アドバイザーとしてご協力いただいた井本先生はおっしゃいます。 「犬の鳴き声がうるさいと感じたとき、飼い主が特定できないと、犬の飼い主すべ て が悪いことになりがちです。ところが、ペットクラブがあればクレームを受け付けてもらえる。それだけでも住民感情は違いますし、迅速な対応も可能になる。私自身の実体験でもありますが、ペットの飼い主が相手に歩み寄り、コミュニティづくりに貢献していけば住民全体の信頼を得ることができる、と確信しています。ペット飼育はとくに珍しい要求ではありません。そして、ペット問題を解決できる集合住宅は理想的なコミュニティといえると思います」 今回、数多くのご相談を受け、ペット飼育者、管理組合、管理会社、ペット非飼育者それぞれが集合住宅とペットの問題に直面し、問題解決に向けて取り組んでいらっしゃることを改めて実感いたしました。私どもCAIRCはそんな方々のサポートを行 う ことで、人間と動物が共生できる社会づくりのお役に立ちたいと考えています。正田陽一CAIRC会長はこう語ります。 「集合住宅は、それぞれ立場の違う人々がともに暮らすコミュニティです。動物が嫌いな方もいれば、動物を家族の一員と感じている方もいる。そんな感じ方、考え方の違いから問題が生じているわけです。今は異なる考え方の人々が上手に共生しているコミュニティも増えてきました。対立してしまう前に、飼育者はペットクラブを設立 し、マナーについて学ぶこと、ペット飼育に反対する人たちの意見に耳を傾け、誠実に対応していくことが大切です。飼育を始めた以上、動物に対する責任を全うすることは義務ともいえるものですから、責任を持って適正にペットを飼っていきたいですね」 ※1「集合住宅における動物飼育を考える協議会」に加入している団体 (社)日本動物保護管理協会 (社)横浜市獣医師会開業部会 (社)東京都動物保護管理協会 (社)ジャパンケネルクラブ (財)日本動物愛護協会 (社)日本動物福祉協会 (社)日本愛玩動物協会 (社)日本動物病院福祉協会 (社)日本動物薬事協会 ペッ トフード工業会 日本ペット用品工業会 日本訓練士団体連合会 (Letter from CAIRC 2001年11月より) |