正田先生のどうぶつ物語第五話 猿山で13年間君臨した名リーダー、ロンの死
第五話 猿山で13年間君臨した名リーダー、ロンの死
私は上野動物園で仕事をすることが多く、その合間に、 よくニホンザルの猿山に行っています。なかでも、興味深く観察していたのが元・ボスのロンと、 ロンを巡る猿たちの関係。ロンは全身真っ白の毛に覆われた雄の老猿で、何十匹もいる猿の中でも 非常に目立ちます。私を含めて彼のファンは多かったんですが、今年(2002年)7月に34歳で 亡くなったため、猿山に行くたびに寂しい思いをしています。でも、猿の34歳は、人間でいえば 100歳以上。13年も猿山で君臨していましたから、95年にボスを退いてからも特別の存在でした。 ロン以前はボスが死ぬと、第二ボスが昇格するというパターンでしたが、ロンは老齢のために力が 弱くなって、余儀なく引退した初めてのケースです。力のあるサルたちはロンが強かった時代を 知っているので、ずっと一目置いていましたが、若いサルたちにはただの老いぼれにしか映らない。 ロンの上に飛び乗ったり、バカにすることもありました。

そもそも、「猿山」は野生のサルには見られない行動形態で、動物園の中のチンパンジーや ニホンザルなどサルの仲間がつくる「群れ」のことです。ただ、猿山といっても、チンパンジーの ボスとニホンザルのボスでは行動がかなり違います。チンパンジーのボスは群れを守るために戦ったり、 ケンカの仲裁をすることもありますし、みんなにエサが行き渡るよう配慮もできます。まさに、 ボスであることを自覚した行動をとるんですが、ニホンザルのボスはエサを見つければ、自分が真っ先に 食べちゃう。心配りなんてせず、ただ単に威張っている(笑)。でも、ロンはやさしくて、面倒見のいい、 優れたリーダーでした。ニホンザルの猿山はよく「人間社会の縮図」に例えられますが、まさにそう。 閉鎖された群れ社会で威張っているボスの姿は人間とそっくりです。ボスに頭が上がらない若者たちや、 リーダーたちとロンの力関係を見ていると、面白かったですね。

9月に行われたロンの「四十九日忌」には、彼のファンが集まって、記念の催しを行い、ビデオを見ながら、 ロンの世話をされていた元・飼育係の方から説明を受けました。ボス時代の映像や政権争いに負けてすぐの 映像などもあり、懐かしかったですね。人間社会もリーダーが次々に代わっていきますが、ロンが いなくなった今、猿山はどんなリーダーが現れて、どんな社会になるのでしょうか。それが楽しみだなあ と思います。
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